1. 危機と人間
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1. 危機、リスク、安心・安全
広辞苑
「あやうい時、危ない場合、危険な状態」
「それまで支配的であった秩序が否定され、まさに崩壊・死滅しようとする決定的な段階」
それぞれの発達課題で課題をうまく達成できるかできないかの分かれ目の時を危機とよんでいる
危機には「危険」の要素が多分に含まれているが、発達課題を達成できれば、その人には新たな発達が生じ、新しい心的力が得られる
神との出会い、運命の時
日本語
危
危ない
機
機会、チャンス
危機という言葉には転換点、分かれ目であるという意味が含まれている
否定的な結果に終わる可能性はあるが、反対により良い方向への変化のきっかけにもなり得るという意味合い
「ある行動をする(しない)ことによって、危機に遭遇する可能性や損をする可能性」
学問分野によって様々な定義
害の程度と起こる可能性の両方が考慮されなければならない
人の主観が入り込む余地はかなりある
一括にされることが多いが、両者は実際にはかなり異なる概念
文部科学省科学技術・学術審議会「人とその共同体への損傷、ならびに人、組織、公共の所有物に損害がないと客観的に判断されること。ここでいう所有物には無形のものも含まれる」
あくまでも心理的、主観的なもの
航空機はきわめて安全性が高い(墜落率の試算$ 0.00009\%)が、車の事故率はそれよりはるかに高い
どうしても飛行機を安全な乗り物とは感じられず、地上を走っているというだけの理由で、車の方が安心だと思ってしまう
人が安心だと感じるもの
1) 自分が理解できるもの
2) 慣れた物
3) 親しみのある物
4) 歴史を経たもの
2. 人の特性とリスク
2-1. 正常性バイアス
ある範囲までの異常は、正常の範囲内のものとして処理するような心のメカニズム
心の平安を保ち、目の前の課題に意識を集中させるためには重要なもの
野生動物の本来のあり方としては、危険に敏感で、警戒を怠らないことは、生命維持のための鉄則であるように思われる
災害の避難の指示や命令が発令されたときに、実際に避難する人の割合は50%に満たないのが普通であるという
「ものをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしいことだ」(寺田, 1948)
正常性バイアス以外にも、我々のこの鈍感さを説明する概念が心理学にはいくつかある
2-2. 一貫性原理
サクラである学習者に対連合学習(2つの単語を対にして憶える)のテストを実施 教師役である実験参加者がより強い電気ショックを施行させるようにする
参加者の実に65%が、最高強度まで与え続けた
ミルグラムは人間が権威(この場合は白衣の実験者)に服従してしまう傾向があるからであると指摘している 人は一貫した態度を示したいし、人からもそうしていると見られたいという欲求を持っている(一貫性原理)
→180ボルトのスイッチを押しておきながら、195ボルトは拒否するという態度をとりにくくさせる
避難勧告や指示を無視するという行動の背景にも、一貫性原理が働いていた可能性が考えられるかもしれない
参加者が服従実験のような状況下におかれたことはいまだかつてなく、どう行動すべきか考えたことすらなかっただろうと思われる
一旦自分が陥った困難な立場に気づくと、自分がどう反応するべきかの情報を直ちに探し始めるだろう
しかし、、関連情報はひどく限られている
他の人がこの場面でどう行動するかについての情報が少しでもあれば、おそらく参加者の行動は違っていただろう
実際、途中で実験を放棄する参加者がいる条件下で行われたミルグラムの実験では、最後まで実験を続行した参加者は10%にまで低下している
避難指示についても、近所の同じ状況下にいる人々が、一斉に避難を開始すれば、おそらく自分も避難しようと思うだろう
責任が自分に有るわけではないと考えられるとき、多くの参加者は自分自身の行為の責任を実験者に帰してしまう
「ただ命令に従っただけ」という態度で、電気ショックを与え続けた理由を説明したと、ミルグラムは報告している
2-3. チェンジブラインドネス
数十秒の間に画面の一部分の色や形が変化し、その変化部分を当てるゲーム
人は変化に気づきにくい特性を持っている
例えばそれが交通事故に結びつくケースも指摘されている
周囲に何もない場所を走っている車同士が、同じ速度で、まっすぐな直線状を走っている時、その直線が交わったときに衝突事故が起こる
車窓から見える相手の車は、背景の景色と共に、殆ど動いていないように見える
相手の車はだんだん大きくなってきているが、その変化に気づかず、相手の車が自分と並行して走っているような錯覚を起こしてしまう
チェンジブラインドネスは、長期の事象でも、ゆっくりした変化だと気づかないということがある
認知症高齢者の家族は、高齢者の認知症がかなり進行してしまうまで気づかないことが多い 社会のほんのちょっとした変化に気づかないでいると、ある日突然取り返しのつかない大きな変化となって、我々の生活も生命までも脅かされる社会になってしまうという警告
2-4. 疑似種
エリクソンが指摘
愛着や誇りを感じる人の所属集団
我々は人類という種であるが、それよりは日本人とか、会社員とか、○○家の家族など、ある限られた集団の一員であることの方が意識されやすい
自分の所属集団の中の人々に対しては、強い結びつきの感覚や同胞意識を持つ
集団外の異種の人々に対して、憎しみや嫌悪を感じたり、異種の人間は排除してしまっても構わないと感じてしまうという
異種の人間に対する攻撃や排除行為は、自分たちの種に対する忠誠心の現れとして高く評価され、称賛される